2013/12/30

日本の出張、シンガポールでの出張

日本では一般的に「100km以上」の移動が伴うと出張扱い。

国土面積が東京23区とほぼ同一のシンガポールだと、100kmも移動したら余裕で国外へ。

グローバル化への適応能力を考えた時、物理的な制約も一つの要素として関わってくる。

2013/12/24

出版で重要な「目次づくり」に使える13の質問

4月に出版予定の本(タイトル未定)の目次を再度練り直す。

刺激を得るために、いくつか質問を用意。
オーバラップしているものもあるけど、だいたい13個ほど出てきた。

  1. なぜ〇〇をテーマに選んだのか?
  2. 類似テーマと何が違うのか?どんな利点・限界があるのか?
  3. 応用するにはどうすればいいか?どんな事例があるか?
  4. なぜうまくいくのか?
  5. どうすればうまくいくのか?
  6. なぜ今〇〇なのか?
  7. 構成要素は何か?
  8. 〇〇とはなにか?
  9. どんな種類の〇〇があるか
  10. どんなプロセスなのか
  11. 前提条件は何か?
  12. どんなトレンドが存在するのか?何が問題となっているのか?
  13. 誰が行うのか?

2013/12/13

経済と社会

「経済的に依存する部分はどこか、社会的に依存する部分はどこか」

出版物のプロトタイプ どこまで??

2014年4月の出版を目指して、プロトタイプをユーザー候補の方々と共有。
初稿の前の段階からみんなの意見を取り入れていいものにする、という考え。

とりあえずどんな反応が出てくるのか知りたくて、初稿を100だとしたら20〜30ぐらいの完成度で共有してみた。

すると「どういう人向けに書いているのか?」「どんな構造なのか?」という質問をいくつか頂いた。

この質問は、
  1. 読み手であれば自然に思い浮かぶ疑問だから出てきたのか
  2. FB候補者の中に執筆経験者がいて「まず最初に確認すべきこと」として出てきたのか
どちらなのかなー、とふと思った。

両方かな。
たしかに、本の場合は構造が明確でないと、読み手としてはつらい。

ということは、ある程度しっかりした内容のものを提供する必要がある。
すると、プロトタイプというよりは「初稿」になるだろうか。

当初は「初稿段階で共有しても、決まった構造に対してフィードバックをもらうことになる。だから、ざっくりした状態のまま、意見をもらおう」と思っていた。

しかし、それではフィードバック自体が難しいとのこと。
こと本に関しては、どれくらいのプロトタイプ精度が一番バランスがいい状態なのか。

2013/12/08

Howを考えるからうまくいかない

デザイン思考はイノベーションを起こすためのツール。Howに位置づけられる。

…が、イノベーションを起こそうとした時にまず考えるべきはWho。

◆「誰と一緒にイノベーションを起こすのか」

・優秀であること(能力)
・やる気があること(情熱)
・相性がいいこと(人格)

今年の3月にIDEOのデザイナーに聞いたところ、新しく人を採用するときには「4〜5人1グループの社員が、採用予定の人を数回に分けて面接する」とのこと。

目的は「相性」をみるため。どんなに能力が高くてモチベーションがある人でも、その会社の文化に馴染まない人は活躍することができない。

間違った質問をすると、どんなに考えても間違った答えしか出てこない。

「イノベーションを起こすには、チームや組織にどんな人が必要なのか?」

2013/11/25

鎖国:同業他社様からのお申し込みはご遠慮ください

 「同業他社様からのお申し込みはご遠慮ください」

自社の強みを築いた上なら、むしろ同業者にもじゃんじゃん参加してもらって、一緒に市場を大きくする方がリターンは大きいと思うのだけど。

市場の成長可能性がもはや限界なら話は別だが。
(もしくは医薬品など、成果が一瞬で100%同じようにコピーされてしまう業界)

有限である土地が最大の資本である時代は「占有すること」が最重要。

しかし、今や無限の知識が一番の資本。「共有すること」の方がよっぽど競争力(協働力??)獲得につながると思っている。

もちろん、公開してもハゲタカみたい倫理に欠ける奴がいるから、そこはちゃんと防衛しないとダメだけど。(生産的じゃないから正直めんどくさーい。笑)

江戸時代は物理的に鎖国をしていた。
明治維新で開国。

しかし、これまで人類が積み上げてきた叡智に関しては、その解放をまだまだためらっているように思う。

黒船が丁寧に「もうそんな時代じゃないんだよ」とお知らせしてくれるならまだいい。

21世紀の鎖国は、黒船がやってこない。
単に「あそこは何をやってるかよくわからない。関わっても時間の無駄だ」と世界から無視されて終わるだけ。

…ということを最近はよく考えている。

まずは自分が関わる身近なところから。

理想だけでは何の足しにもならないけど、理想にフタをしたら人生おもしろくない。

理想を語るに足りるだけの、教養ある人(≒社会的に価値がある知識と行動を体現する人)になりたいもんだね。

まだまだ迷惑かけたり失敗したりと、反省することの方が多い毎日。


今年も精一杯。やれるだけ。やったことしか形にならん。

2013/05/30

『21世紀の歴史』メモ


ジャック・アタリの『21世紀の歴史』に目を通した。

細かい点は置いといて『第三の波』『ハイ・コンセプト』『ポスト資本主義社会』『クリエイティブ資本論』などと同様の印象。

歴史の概観を知るには、歴史書よりも未来予測系の本読むほうが早い。まとまっているので。

以下メモ。
  • 知識の伝承は進化のための条件
  • 神聖なるものはタブーを正当化する
  • 言葉は強烈な武器となる可能性がある。市場がバランスを失うと危険が生じる
  • 人類は、ノマドと定住民との衝突によって、権力と自由を手に入れた
  • ユダヤーギリシャの理想:自由こそが究極の目的であり、道徳規範の遵守ともなり、生存条件でさえある
  • アジア:自らの欲望から自由になることを望む。西洋:欲望を実現するための自由を望む
  • 巨大勢力がライバルに攻撃されると、勝利するのはしばしば第三者。勝者は、しばしば打ち負かした側の文化に傾倒する。世界の権力は、東に富が残っていても西に移動する。
  • どれほど影響力のある宗教の教義でも、個人の自由の歩みを遅らせることに成功しなかった。いかなる権力もこの歩みを持続的に押しとどめることはできなかった。
  • 外国人エリートの受け入れは、成功の条件
  • 金融と保険とは密接なつながりがあり、この2つは市場の勢力にとってきわめて重要
  • 新たなコミュニケーション技術の確立は、社会を中央集権化すると思われがちだが、時の権力者に情け容赦ない生涯をもたらす
  • 欠乏が人びとに新たな富を探し求めさせる。不足とは野心を生み出すための天の恵み。技術を発明したのが誰かよりも、文化的・政治的に活用可能な状態であることの方が重要
  • 専制的な国家は市場をつくり、市場が民主主義をつくる
  • 技術革新が一般化するまでには社会的ニーズがあっても約半世紀かかる。
  • 今後、保険と娯楽産業(不安に対処するものと、不安を紛れさすもの)が反映する
  • 就労可能性の証明
  • 産業が、心地よい時間と共同体の知性(財と共通資本)を発展させる
  • 利他主義のトランスヒューマン
  • 世界規模のインテリジェンス
  • クリエイティブクラスを生み出す:修得知識を具体的な富に変える学生の能力を高める。失敗したものに二度目三度目のチャンスを与える
  • 知識経済へのスムーズな移行

2013/05/20

【Web連載】組織的なイノベーション、道具としてのデザイン思考

翔泳社のビズジェネにて
『組織的なイノベーション、道具としてのデザイン思考』
という連載を開始。

第1回のテーマは「組織によるイノベーションの時代」。

天才的イノベーションと組織的イノベーション


抽象的なコンセプトやアイデアが得意なアメリカと、具体的な改良や改善が得意な日本。

両者の経営スタイルをうまく融合させた、ハイブリット式イノベーション経営を最終的に形にしたい。

■組織的なイノベーション、道具としてのデザイン思考
組織によるイノベーションの時代





2013/03/17

主観的な情熱を持って冷静に分析を行う【2日目:プロファイル合成】

 アメリカ滞在2日目。翌日17日(日)からESIプログラムがスタート。

 そのための準備として、日本で行った「イノベーション実践」に関するインタビュー結果をまとめる。

■背景
 インタビューのきっかけとなった疑問は「イノベーションに関する情報はたくさんあり
、社内には情熱を持った推進者がいる。しかし、組織的にイノベーションへ取り組んでいる企業が少ない。なぜだろうか?」というもの。

 上記の疑問は、デザイン思考のワークショップ参加者と交流する中で感じたもの。

 ワークショップ参加者の中には「このままでは組織の未来が危うい」という意識から、積極的に社内でイノベーション実践のための取り組みを始めている人がいる。

 しかし「イノベーションを起こす必要性を、周囲の社員が感じていない」「トップは『イノベーションが重要』と言っているが、実際は口だけ」など、うまくいっているとは言いがたい状況がある。

 このよう現状を解決する最初の一歩として「組織で何が起こっているのか?」を把握しようと、渡航前に日本で10名弱の方にインタビューを行った。この内容をまとめるために行ったのが、今回のキャラクター作成。

ホテルのロビーでミート

■キャラクター作成を行う理由
 単にインタビューするだけでは、問題把握が曖昧になる。「よい話が聞けてよかった」という状態で留まることを避けるには、問題発見に関連があると思われる特徴をインタビュー結果から抽出してまとめる必要がある。
 
 そのための1つの方法がキャラクター作成。詳しくは『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』のp.17を参照(今読み返すと直訳過ぎたと反省。何らかの形で修正や反映が出来れば)。ここでのキャラクターは「作成」という表現が示すように空想的なもの。実際にその特徴を持った人が存在するわけではない。名前や年齢も架空で設定する。

 しかし、既にいくつかインタビューをした後で行うため「ユーザーが現状を変えたいと葛藤している状態」はちゃんと反映されている。これにより、インタビューしたうちのユーザー1人だけが持っている特徴のみに焦点を当てることなく、問題発見を行う上で有用な特徴を抽象的なレベルで把握できる。

■キャラクター作成の手順

 今回は以下の手順で行った。
  1. 各メンバーが行ったインタビュー結果を共有
  2. 問題意識に関わりがありそうな「典型的な特徴」をポスト・イットに書きだす
  3. 書きだした各特徴を見ながら「問題解決と関わりがありそうなもの」に各自が投票
  4. 投票数が多かった特徴を元に、キャラクター作成

キャラクター作成

■キャラクター作成によるメリット2つ
 キャラクター作成によって得られるメリットは主に2つある。

 1つが次の問題定義(Define)で必要となる「問題発生の要因」を明らかにする助けになるということ。「ユーザーが抱える真の問題は何か?」を把握してなければ、問題解決は運頼みのギャンブルになる。求められるのは「問題の徹底的な分析」と言える。ユーザー自身が気づいていない感情的な側面にも振れることで、表面的でない本質的な問題分析ができるようになる。

 もう1つのメリットは「このユーザーのために問題を解決したい!」という情熱が得られること。今回のキャラクター作成においては、むしろこちらのメリットの方が重要かもしれない。どんなに客観的に真の問題を把握できたとしても「ユーザーに貢献したい気持ち」がなければイノベーションは起こせない。そういえば、昨日ミートしたIDEOの人達も「いかにパッションが重要か」を話していた。
 
 問題解決をしたいと思う根源的な情熱の獲得と、問題解決に欠かせない客観的な状況分析。この2つを行う助けとなるのが今回のキャラクター作成。右手に情熱、左は事実(分析された状況)といったところ。

2013/03/16

人々が知りたいのは素直な感情【初日:IDEOミート】

アメリカ訪問初日。IDEO.orgの人とホテル近くの場所、Radius Cafeでミート。


ベジタリアン・キッシュがおいしかった。

ミートのテーマは、HCD toolkitに掲載する日本の社会問題解決事例について。
主にお互いの認識共有と今後の予定についてざっくり確認。

ミート@Radius Cafe
話を聞いてて印象的だったことをいくつか

  • 社会問題の解決をする方が、新しく会社で製品やサービスを開発するよりもより多くの人々の生活に影響を与えることができる
  • 事例は話をわかりやすくするだけでなく「人間味」を持たせ、そのテーマを身近なものに変える効果がある
  • さらに、優れたビジュアライゼーションを加える事で、読み手の潜在的な感情に深くアピールできる
  • 例えば、自己紹介用の写真。かっこつけた写真はニセモノの日常しか示さない。人々が知りたいのは「普段の生活でどんな表情をするのか」

「人々が知りたいのは素直な感情」ってとこですね。

今日のまとめ


2013/02/21

雑感:最近感じる「組織系」vs「キャリア系」


超おおまかに言えば、2つ

1)「分析的・戦略構築・組織系」に関心がある人
2)「情熱的・自己成長・キャリア系」に関心がある人

例えば、
前者に対する批判は「固すぎて面白みもない。現場で役に立たない机上の空論」で、
後者に対しては「精神論で再現性がない。粗悪な自己啓発」かな。

1と2の人材がいないと、イノベーションは起きないのです。

両方をつなぐには
1)理想:コンセプト重視のふわふわしたアイデア
2)現実:実行重視の一点突破型アクション

を行ったり来たり。

最初はプロセス構築でイノベーションが起きると思って。
けど、構成メンバーの興味や強み・個性を活かさないと組織でイノベーションが起きないことがわかってきた。

まあ、そりゃあ当たり前なんだけどね。
戦略的な仕組みと、熱くてエネルギッシュな人材。

大抵は発想が偏るのでバランスが必要。

2013/02/14

不確実性を乗り越えるには? 〜リスク回避思考と反復学習思考〜



■投資に失敗した銀行家
 「馬車は定着している。しかし車は違う。一時的な流行に過ぎない」
…こう述べたのは1903年当時のミシガン貯蓄銀行頭取。後に自動車の大量生産方式を確立するフォード・モーター社への投資に対して、彼の意見は否定的でした。
 今から考えれば、的外れな意見だと言えます。しかし、新しいものに対して多くの人は懐疑的なものです。なぜ人々は否定的な態度をとるのでしょうか。
 理由の1つは不確実性です。既に普及しているものの需要は、ある程度予測できます。しかし「馬車の利用が当たり前の時代に、車を投入すること」は前例がありません。予測ができないのです。
 仮に顧客の意見を聞こうにも「車」という市場が存在しないため、市場調査さえできません。このような状況で、車の価値を認めることは難しいでしょう。「不確実性が高いから投資はできない」と思うのは自然かも知れません。

■不確実性とは何か?
 今日のテーマは「不確実性」です。もし、先の銀行家が不確実性に正しく対処できたのであれば、投資に成功して莫大な富を築いたことでしょう。ちなみに、銀行家の意見を無視してフォード社に5,000ドル投資したラッカム(Horace Rackham)は、数年後に12,500,000ドルを手にしました(2,500倍のリターン)。
 毎年これほどのリターンを期待することはできませんが、不確実性を上手に扱うことはイノベーションを起こす上でも重要です。
 では、不確実性とは何を意味するのでしょうか?理解の助けとなるのは「リスク」です。「不確実性」と「リスク」は似ている言葉ですが、実際は違います。

<リスク:予測できるもの>
 経済学者のフランク・ナイトによれば、リスクは「どれくらいの確率で起こるか予測できるもの」です。 自動車生産を単純化した例で考えてみましょう。ある自動車メーカーが1万台に1台の割合で不良品を作るとします。この場合、1万台の車をつくると、必ず1台が廃棄されることになります。
 製造台数が何台であっても、廃棄台数は常に計算できます。どれだけ廃棄コストがかかるかも常に予測できますね。

<不確実性:予測できないもの>
 これとは別に「どれくらいの確率で起こるか予測できないもの」が不確実性です 。(※1)
 これは、馬車が定着している時代に、車をつくって売るようなものです。車の製造コストはわかります。しかし、車が何台売れるのかはわかりません。リターンが不明確なため「工場にどれだけ投資すればいいか」といった判断は難しくなります。
 このような状況で車をつくる場合に障害となるのが「不確実性」です。

■不確実性を扱う学習方法
 リスクは、過去の情報を元にした分析や計算によって管理が可能です。重視されるのは「データは確実か」「決められた手順の通りに実行されているか」といった点です。ルーチンワークに代表されるような、オペレーションの視点が基本となります。
 一方、不確実性が存在する世界では「データ」も「決まった手順」も存在しません。客観的に予測することは不可能です。残る選択肢は、経験や知識に基づいて主観的な予測を行うことです。
 誰もが馬車を利用している状況で車の需要を考えることも、主観的な予測になります。冒頭の銀行家は、その予測に失敗しました。不確実性の中で行う予測は、大抵が失敗に終わります。
 ここで避けるべきは「失敗が多いから手を出さない」とするリスク回避思考です。採用すべきは「失敗から学べることを活かそう」とする学習思考になります。なぜなら、不確実性はその性質上、主観的な予測でしか対処できません。つまり「失敗から学ぶことで、いかに主観的な予測の精度を高めるか」という発想が重要になるのです。
 このような視点に立つと、不確実性が高い状況で必要なものが見えてきます。それは、「①失敗の被害を最小減にしながらも②失敗からの学びを最大化させる」方法です。
 イノベーションを実践する企業家(※2)が身に付けるべきは、不確実性を扱う学習方法になります。

■学習方法としてのデザイン思考
 その学習方法の1つがデザイン思考です。対比させるために、リスクを扱うビジネス思考も取り上げてみます。イノベーション実践には、両者のバランスをうまくとることが求められます。以下のステップで考えてみましょう。
  1. リスクと不確実性の区別を行う
  2. リスクを正確に計算し、適切に管理する
  3. 不確実性の予測精度を高めるため、失敗から学ぶ

 2.で有効なのが、ビジネス思考に代表される数値分析やフレームワーク化です。.3.で有効なのが、デザイン思考における観察やプロトタイピングです。ユーザーの行動や反応を理解し、ユーザーについて深く学ぶ過程の中で「主観的な予測の精度」を高めていきます。なお、この時に予測しているものが「インサイト」です。
 大抵の場合、最初に予測したインサイトは外れています。なぜ外れるのでしょうか。それは、ユーザーの気持ちや本音は、データ化や計算を扱う「リスク」に分類できないからです。データ化も計算もできない「不確実性」に分類されます。つまり、観察やプロトタイピングを繰り返し学習しながら、主観的な予測を何度も修正することが重要なのです。

■不確実性を乗り越える
 時代の変化が乏しければ、過去の延長がそのまま未来となります。昔のデータを正確にとって、正確に計算すれば万事うまくいきます。しかし、時代の変化が激しければ、未来は過去とは別のものになります。予測ができません。軸足が、リスクから不確実性に変わるのです。 
 イノベーション実践において、組織はリスクと不確実性の両軸で物事を捉える必要があります。みなさんが所属している組織は、リスク回避が得意でしょうか。それとも反復学習が得意でしょうか。デザイン思考は、不確実性の中で主観的な予測を行い、繰り返し学ぶ中でその精度を高めることに有効なツールです。目の前のチャンスを逃した銀行家にならないように、ぜひ社内で活用して下さい。

※1…Knight(2006)は広義の不確実性を「リスク」(risk)と「真の不確実性」(true uncertainty)の2つに分けています。今回紹介している不確実性は、後者の「真の不確実性」です。
※2…変化を機会と捉えて、うまく活用しようとする人のこと。創業者や従業員といった立場・所属に関係なく、イノベーションの担い手として欠かせない存在。


■参考文献
  • Drucker, P.F. (1985) Innovation and Entrepreneurship, Harper & Row.
  • Knight, F. (2006) Risk, uncertainty and profit. Dover publications.
  • Orrell, D. (2007) Apollo's Arrow: The Science of Prediction and the Future of Everything, Harpper collins UK.(邦訳:『明日をどこまで計算できるか?』大田直子他訳, 早川書房, 2010)
  • 酒井泰弘 (2012) 「フランク・ナイトの経済思想 : リスクと不確実性の概念を中心として」 彦根論叢, (394), 38–57.

2013/01/21

イノベーションは外の世界で起きる 〜P.F. ドラッカー『イノベーションと企業家精神』〜


2013年からスタートした、デザイン思考実践者のためのニュースレター


デザイン思考家のためのニュースレター
デザイン思考家のためのニュースレター

1月号の中から、自分が担当しているコーナーの内容を紹介します。

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 今回紹介するのはP.F.ドラッカーの『イノベーションと企業家精神』です。原著は1985年に出版されましたDrucker, P.F., Innovation and Entrepreneurship, Harper & Row。必読書という意味で、イノベーション実践の古典と言えるでしょう。

 この本で紹介されているのは、イノベーションを起こすための7つの機会や、ベンチャーが成功するために欠かせない4つの原則などです。詳細は本を読んで頂くことして、今回は「イノベーション」そのものについて学びたいと思います。

イノベーションと企業家精神 by P.F.ドラッカー
P.F.ドラッカー著/上田惇生訳/ダイヤモンド社/定価2,100円(税込)

イノベーションとは何か?
 イノベーションを日本語に訳すと技術革新です。この言葉を聞くと「イノベーションは技術からスタートする」「技術者や科学者がイノベーションを起こす」と感じるかも知れません。しかしドラッカーは「イノベーションは技術の専売特許ではない」と言います。

 それでは彼はイノベーションをどう定義しているのでしょうか。ドラッカーによれば「存在する資源に対して、新たな富を生み出す能力を与えるもの」がイノベーションです。

 それまで存在を認識されながら無視されていたものや、誰も気づいていなかった埋もれた資源を、価値あるものへと変えることでイノベーションが起きます。


顧客の知覚がイノベーションのカギ
 顧客の視点に立ってイノベーションを表現し直すなら「既にある資源(技術・知識など)から得られる価値や満足を、全く新しいものに代えて提供するもの」になります。

 ここから「イノベーション実践において重要なのは顧客の知覚だ」とわかります。組織が「これはイノベーションだ」と思っていても、人々が「イノベーションである」と認識しなければそれはイノベーションにはなりません。
 
 文字にするとわざわざ言うまでもないように聞こえますが、実際のケースではこの視点が後回しになりがちです。「技術革新」としてイノベーションは訳されましたが、技術や知識といった「組織が持っているもの」からスタートしても、イノベーションは起きません。

 イノベーションは外部に対する成果です。もちろん、イノベーションのためには企業や企業家が様々な資源を投下する必要があります。しかし、ユーザーや市場や社会がそれを受け入れた時に、初めてそれがイノベーションとなるのです。


外の世界を知ることから始まる
 外部に対する認識の欠如がイノベーションの失敗を招きます。最新の技術や優れたビジネスモデルの存在よりも、顧客や市場や社会が価値を認める内容であるかどうかの方が重要です。

 デザイン思考は他者への共感からスタートします。外の世界を知った上で、自分たちは何ができるのか、どんな価値を提供すべきなのか。その認識が組織内で共有されてから、初めて技術や知識、ビジネスモデルや戦略が生きてきます。

 英語に「歩く前に這うことを学ぶ必要がある(You Have To Learn To Crawl Before You Learn To Walk.)」=「ものには順序がある」ということわざがあります。イノベーションにも同じです。

 どのような順番で、何をすべきなのか。基本を学びたい人は是非読んでみて下さい。